田中良和国際法律事務所

Independent Contractor vs Employee:カリフォルニア州ABCテストに基づく実務判断の質問票

カリフォルニア州では、労働者を「Independent Contractor(独立請負人)」として扱うか、「Employee(従業員)」として扱うかの区別が、労働法・税法・保険法の観点から極めて重要です。とりわけ、2019年に施行された Assembly Bill 5(AB5) により、労働者をIndependent Contractorとして扱うための基準が大きく変更されました。

多くのケースで、カリフォルニア州の最高裁が示した「ABCテスト」が適用され、事業者が労働者をIndependent Contractorとして扱うことが難しくなっています。


ABCテストでは、労働者がIndependent Contractorとして扱われるためには、次の3つすべての条件を満たす必要があります。

  1. A:コントロールの独立性
     労働者は業務遂行において、企業(雇用主)からの管理や指示を受けていないこと
  2. B:業務の非中核性
     労働者が提供するサービスが、企業の通常の事業内容とは異なること
  3. C:独立したビジネス
     労働者が独自にビジネスを運営しており、他の顧客にも同様のサービスを提供していること

以下は、実務でABCテストをもとに労働者をIndependent Contractorとして扱えるかどうかを判断するための質問リストです。チェック形式で、現場担当者や事業主が判断しやすいように構成されています。

A. Control(コントロールの独立性)

質問はいいいえ
1. 労働者は仕事の手順や方法を自ら決定しているか?
2. 労働時間や勤務場所の指定を受けていないか?
3. 使用する道具や機材は自分で用意しているか?

B. Business(業務の非中核性)

質問はいいいえ
4. 労働者の業務は、会社の主要な事業内容とは異なるか?
5. 業務が一時的または補助的な性格を持つか?

C. Customarily Engaged(独立したビジネス)

質問はいいいえ
6. 労働者は自らのビジネス名やロゴを使用しているか?
7. 他のクライアントにも同様のサービスを提供しているか?
8. 特定の企業に収入を依存していないか?
9. 業務に関する損益リスクを自ら負っているか?

  • すべての質問に「はい」と答えられる場合:Independent Contractorとして扱われる可能性が高いです。
  • 「いいえ」が複数ある場合:Employeeと見なされるリスクがあります。

実際の判断では、契約書の文言よりも実際の働き方(実態)が重視されます。形式だけでIndependent Contractorに分類しても、現場での実態がEmployeeに近ければ、労働法上はEmployeeと見なされる可能性があります。


もし本来Employeeとされるべき人を誤ってIndependent Contractorとして扱った場合、次のようなリスクが生じます:

  • 未払賃金・残業代の請求
  • 州労働局(DLSE)による制裁
  • 雇用保険・労災保険・失業保険の過去分の納付義務
  • 州税務局やIRSによる税務上のペナルティ

この質問票はあくまで簡易的な目安です。特定の事例について正確な判断を下すためには、労働法に詳しい弁護士との相談が不可欠です。

当事務所では、カリフォルニア州のAB5およびABCテストに関連するコンサルティング・契約書レビュー・リスク評価などを行っています。疑問やご不安がある場合は、お気軽にご相談ください。


【免責事項】

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案についての法的助言を構成するものではありません。具体的な法的判断が必要な場合は、弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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