田中良和国際法律事務所

MarelliのChapter 11申請:日本企業はどう債権回収すべきか?Critical Vendor と Foreign Vendor

2024年、自動車部品大手Marelli(マレリ)がアメリカ連邦破産法第11章(Chapter 11)の適用を申請したことは、多くの日本企業に衝撃を与えました。Marelliと取引のある日本企業にとっては、「売掛金は回収できるのか」「どのような対応を取るべきか」が大きな関心事です。 この記事では、Chapter 11の仕組み、日本企業が活用すべき「Critical Vendor」や「Foreign Vendor」制度、そして2025年7月11日時点で裁判所が承認した支払上限額について解説します。

Chapter 11は、アメリカ企業が破産保護下で事業再建を目指す手続です。手続開始と同時に「自動停止命令(Automatic Stay)」が発効され、債権者による個別の督促や差押えは原則として禁止されます。再建計画に基づき、債権者に対する配当が行われます。

Chapter 11申請前に発生した売掛金や支払義務は「prepetition claim(申立前債権)」とされ、再建計画に従って処理されます。一般的な無担保債権は大幅にカットされることも多く、満額の回収は難しいのが実情です。

Chapter 11では、破産企業が「事業継続に不可欠」と認めた業者を「Critical Vendor(重要取引先)」として指定し、例外的に申立前債権の支払いを受けることが可能です。

裁判所が承認した支払上限(Critical Vendor)

2025年7月11日、米国破産裁判所は、Critical Vendorへのprepetition claimの支払いとして、総額1億1,000万ドル($110,000,000)までの支出を承認しました。 この金額を超える支払いを行う場合、Marelliは別途裁判所の追加承認を得る必要があります。

米国外の業者(たとえば日本企業)も、Marelliにとって重要なサプライヤーである場合、「Foreign Vendor」としての支払いが認められることがあります。

裁判所が承認した支払上限(Foreign Vendor)

同じく2025年7月11日、破産裁判所は、Foreign Vendorに対して総額12億6,000万ドル($1,260,000,000)のprepetition claim支払いを承認しました。 こちらもCritical Vendorと同様、この上限額を超える支払いには裁判所の別途承認が必要です。

さらに、担保権付き債権(Lien Claim)に関しては、総額2億1,000万ドル($210,000,000)の支払いが2025年7月11日付で裁判所により承認されています。

  • 債権内容の整理と証拠化: 売掛金の明細、契約書、納品書など、債権の存在を証明する資料を整備。
  • Proof of Claim(債権届)の提出: 裁判所指定の期限内に提出。これを怠ると配当を受けられなくなります。
  • Critical VendorまたはForeign Vendorとして交渉: Marelli側の財務アドバイザーや法務部と連携し、支払対象となるよう働きかけましょう。
  • アメリカの破産弁護士との連携: 米国法の専門家の助言を受け、適切な申立や戦略を立てることが不可欠です。

Chapter 11は「情報とタイミングの戦い」と言われます。裁判所は巨額の支払いを承認しましたが、すべての債権者が支払対象になるわけではありません。 Critical VendorやForeign Vendorとして指定を受けるには、事実と証拠に基づく説得力のある主張が必要です。Marelliの再建を巡る動向に注視しつつ、適切な法的手続きを取ることが、日本企業の債権回収成功の鍵を握ります。

免責事項(Disclaimer)

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、特定の事案に対する法律的助言を構成するものではありません。実際の手続や戦略については、必ず弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和

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