新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミック下で、多くの企業がアメリカ連邦政府の Paycheck Protection Program(PPPローン) を活用しました。特に日系企業や海外に関連会社を持つ企業にとって、従業員数のカウント方法は大きな争点となりました。
1. 原則:海外関連会社も含めた従業員数をカウント
PPPローンの申請にあたっては、企業単体の従業員数ではなく、関連会社(affiliates)の従業員も合算して500人以下であることが求められます。
ここでいう関連会社には、米国内の関連会社だけでなく、海外の関連会社(foreign affiliates) も含まれます。
SBA(米国中小企業庁)の規定は次の通りです:
“Therefore, to calculate the number of employees of an entity for purposes of determining eligibility for the PPP, an entity must include all employees of its domestic and foreign affiliates, except in those limited circumstances where the affiliation rules expressly do not apply to the entity.”
つまり、原則として海外拠点の従業員数も含めて計算しなければならない、ということです。
2. 例外:2020年5月以前の申請
しかし、SBAは当初のガイダンスが曖昧であったため、多くの企業が 「海外関連会社の従業員数は除外してよい」と誤解して申請していました。
これについてSBAは、2020年5月5日にFAQを通じて明確化するとともに、2020年5月5日以前にPPPローンを申請した企業には特例を認めることを発表しました。
SBAの声明は以下のとおりです:
“However, as an exercise of enforcement discretion due to reasonable borrower confusion based on SBA guidance (which was later resolved through a clarifying FAQ on May 5, 2020), SBA will not find any borrower that applied for a PPP loan prior to May 5, 2020 to be ineligible based on the borrower’s exclusion of non-U.S. employees from the borrower’s calculation of its employee headcount if the borrower (together with its affiliates) had no more than 500 employees whose principal place of residence is in the United States.”
要点は次の通りです:
- 2020年5月5日以前に申請した場合
→ 米国内の従業員が500人以下であれば、海外従業員を除外していても不適格にはならない - 認定において「虚偽の申告」とは見なされない
- ただし、PPP資金は海外従業員や海外拠点のために使用できない
3. 実務上のポイント
- 申請日が2020年5月5日以前か以降か が大きな分かれ目になります。
- 以降の申請については、海外関連会社の従業員数も含めて500名以下であることが必須です。
- PPP資金の使用目的は常に 米国内従業員の給与や事業継続費用 に限定されます。
4. まとめ
コロナ下で導入されたPPPローンは、多くの企業にとって救済策となりましたが、海外関連会社を持つ企業にとっては従業員数のカウント方法が大きな落とし穴となりました。
ただし、2020年5月以前に申請していた企業については、SBAが例外的に柔軟な扱いを認めています。
✅ 免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、法的助言ではありません。個別の事案については、必ず弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和