田中良和国際法律事務所

【カリフォルニア離婚訴訟】Ostler-Smith(オストラー・スミス)判決とは?ボーナスやインセンティブを含む収入への対応

カリフォルニア州では、離婚後の配偶者扶養(Spousal Support)や子供の養育費(Child Support)を算定する際、ボーナス・インセンティブなどの「不定期収入」をどう扱うかが問題となることがあります。
この点に関して重要な指針を示したのが、いわゆるOstler-Smith(オストラー・スミス)判決
です。


In re Marriage of Ostler & Smith (1990) 223 Cal.App.3d 33
この判決では、裁判所が以下のように判断しました:

配偶者の収入の一部がボーナスやコミッションなど、変動的かつ予測不可能な形で支払われる場合、裁判所は「将来の追加支払い(percentage order)」という形で、ボーナス収入の一定割合を扶養や養育費として支払うよう命じることができる。

つまり、固定給をもとにした基本的な支払い額に加え、ボーナス収入の〇%を追加で支払う命令を裁判所が出せるという仕組みです。


カリフォルニアの多くの高収入者(特にシリコンバレーやロサンゼルスのエグゼクティブ職・セールス職など)は、収入の一部がストックオプション、RSU、ボーナスなどの形で支払われます。
このような収入は年によって大きく変動するため、固定額のサポート命令では不公平が生じるおそれがあります。

Ostler-Smith判決により、裁判所は次のように柔軟な命令を出すことができます:

  • 固定給部分に基づく「基本的扶養額」を決定
  • ボーナス・RSUなどに対して「Ostler-Smith percentage」を設定(例:ボーナスの15%を追加支払い)

例:夫が年収20万ドル+年末ボーナス5万ドルの場合

  • 基本扶養額:月額$3,000(固定給に基づく)
  • Ostler-Smithオーダー:ボーナスの15%を受領後30日以内に支払う

→ ボーナスが実際に支払われたときに、15%分を追加で支払う義務が発生します。

このように設定することで、不定期収入がある場合でも公正なサポート額を維持できます。


  • Ostler-Smithオーダーは、支払い義務者が実際にボーナスを受け取った場合のみ適用されます。
  • 将来の不確定収入を見越して「固定的に高額の扶養額」を設定するよりも、現実的かつ柔軟です。
  • 税務面・雇用契約上の収入構成(W-2、RSU、株式譲渡制限など)を正確に把握する必要があります。

実務では、Ostler-Smith命令を**Marital Settlement Agreement(離婚合意書)**に組み込むことで、後々のトラブルを防ぐことができます。
特に、テック企業勤務者や外資系企業役員のケースでは、RSUやストックボーナスの扱いについて明確な条項を定めておくことが重要です。


まとめ

Ostler-Smithオーダーは、
✅ 収入の一部がボーナスやRSUなど変動的な場合に有効
✅ 公平性を保ちながら柔軟に扶養を設定可能
✅ 離婚合意書に明記することで後の紛争を予防

離婚・扶養の問題でお悩みの方は、収入構造を正確に分析し、最適なOstler-Smith条項を設定することが大切です。


免責事項
本記事は一般的な法的情報の提供を目的としており、特定の案件についての法的助言を構成するものではありません。具体的な事案については、必ずカリフォルニア州弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和

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