田中良和国際法律事務所

永住権と市民権の違い

米国での法的地位と日本国籍への影響を徹底解説

米国での滞在資格を考えるのに、永住権(グリーンカード)と市民権(アメリカ国籍)の違いを理解することは非常に重要です。特に近年の移民政策の変化を受けて、市民権取得を検討する方が増えています。両者の違い、市民権取得のメリット・デメリット、そして特に日本国籍を持つ方への影響について詳しく解説します。

永住権保持者は「合法的永住者」として米国に無期限に居住・就労することができますが、市民権保持者とは異なる権利や義務があります。

永住権保持者の主な権利と制限

  • 米国内での居住・就労が可能
  • 社会保障給付の受給資格あり
  • 多くの教育支援プログラムへのアクセス
  • 選挙権・被選挙権なし
  • 一定期間の国外滞在に制限あり(通常6か月以上の国外滞在は再入国時に問題となる可能性あり)
  • 一部の連邦政府職に就くことができない
  • 特定の犯罪行為により国外退去の対象となることがある

市民権保持者の主な権利

  • 選挙権と公職選挙への立候補資格
  • 米国パスポートの取得
  • すべての連邦政府職への応募資格(セキュリティクリアランス職種含む)
  • 国外滞在期間に制限なし
  • 国外退去のリスクなし
  • 在外米国大使館・領事館による保護
  • 市民権保持者として家族を優先的にスポンサーできる

1. 政治的権利の獲得

選挙に参加でき、米国の政治に直接的に関与できます。自身や家族の将来に関わる政策に影響を与える手段を持つことは、大きな利点です。

2. 安全保障の向上

市民権取得後は、どのような政権下でも国外退去のリスクがなくなります。移民政策が厳格化される可能性のある時代において、大きな安心材料です。

3. 家族呼び寄せの優遇

市民は、配偶者・未成年の子・両親などを迅速に米国へ呼び寄せることができ、永住権保持者よりも手続がスムーズです。

4. 旅行の自由

米国パスポートで約180か国以上にビザなし渡航が可能。また、長期海外滞在によって永住権を失うリスクもなくなります。

5. 雇用機会の拡大

一部の政府機関や防衛産業など、セキュリティクリアランスを必要とする職業に就くことが可能です。

1. 二重国籍の制限(特に日本国籍者)

日本国籍者が米国市民権を取得する場合、原則として日本国籍を失います。これにより:

  • 日本への入国にビザまたはESTAが必要になる
  • 日本での長期滞在や就労にビザが必要
  • 国民健康保険や年金制度への加入・継続に制限の可能性
  • 日本の不動産取得や相続に影響が出ることがある

※日本国籍喪失の時期には個人差があります。詳細は日本大使館または弁護士に確認してください。

2. 世界所得への米国での納税義務

米国市民は居住地に関わらず、全世界の所得をIRSに申告・納税する必要があります。

3. 兵役登録義務(男性)

18〜25歳の男性は、選抜徴兵制度(Selective Service System)に登録義務があります。現在は徴兵制は存在しませんが、登録は法的義務です。

2025年1月のトランプ大統領再任以降、市民権申請数は増加しています。背景には:

  • 移民制度に対する将来的な変更への懸念
  • 永住権の維持が難しくなる可能性
  • 政治的発言力を得たいという意識
  • 家族の法的安定を確保したいという動機

申請には以下の条件を満たす必要があります:

  • 5年間の永住権保持(米国市民との結婚者は3年)
  • 物理的滞在要件(過去5年間のうち半分以上を米国内で)
  • 良好な道徳的性格の証明
  • 英語力および市民権テスト(米国歴史・政府)に合格
  • 忠誠の宣誓

審査期間は通常6か月〜1年程度ですが、地域や申請件数により変動します。

市民権テストでは、公開されている質問の中から、いくつかの質問をピックアップして質問されます。
事前の準備が必要です。

市民権の取得は、法的安定性と生活の自由度を向上させる一方、日本国籍の喪失など重大な影響も伴います。日本国籍者にとっては、法的・文化的な意味を含めた慎重な判断が求められます。

今後の政治情勢やライフプランを見据え、弁護士との相談を通じて最適な選択をすることをおすすめします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言を構成するものではありません。具体的なご質問は、資格を持つ弁護士にご相談ください。

カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和

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