カリフォルニアに不動産を所有している日本人が亡くなった場合、その相続手続には日本法とカリフォルニア法の双方の理解が不可欠です。どの法律に基づいて相続人が確定され、不動産の名義変更・売却手続が行われるのか、カリフォルニア弁護士・日本弁護士が解説します。
相続人の確定は日本法に基づいて行われる
まず、国際相続においてどの国の法律を適用するかは、日本の「法の適用に関する通則法第36条」により次のように定められています。
「相続は、被相続人の本国法による。」
つまり、亡くなった方が日本国籍を持っていれば、日本の民法に基づいて相続人が確定されます。一方、アメリカ国籍であればアメリカの法律が適用されることになります。
被相続人の国籍のパターン別適用法
ここからは、被相続人の国籍の状況に応じた取り扱いを解説します。
(1)被相続人の国籍が1つの場合
被相続人が一つの国籍(たとえば日本国籍)しか持っていない場合、その国の法律が相続に適用されます。日本国籍なら、日本民法に基づいて、相続人の範囲や相続分が定まります。
(2)被相続人の国籍が複数ある場合
被相続人が複数の国籍を持っている場合、次のルールが適用されます。
- その中に日本国籍がある場合 → 日本法を準拠法とする
- 日本国籍がない場合 → 被相続人の常居所地(habitual residence)の法律を準拠法とする
- 常居所地も特定できない場合 → 最も密接な関係がある国の法律を適用する
まとめ
このように、日本人が亡くなった場合、相続人の確定は日本の民法(第885条以下)に基づきます。カリフォルニアに不動産があったとしても、この原則は変わりません。
カリフォルニア不動産の手続はカリフォルニア法に基づく
不動産のような「固定資産(immovable property)」については、世界的な国際私法上、所在地法(lex rei sitae)が適用されるのが一般的です。したがって、カリフォルニア州にある不動産に関しては、カリフォルニア法に従って手続が進められます。
Probate(プロベート)手続が必要
カリフォルニアの不動産を売却したり、名義変更したりするためには、通常、プロベート(遺産管理手続)が必要です。このプロベート手続きでは、カリフォルニア州の裁判所に申立てを行い、相続人を正式に認定してもらう必要があります。
手続きの流れ(一例)
- カリフォルニア州裁判所へプロベートの申立て(Petition for Probate)
- 日本で確定した相続関係(戸籍謄本など)を英訳・認証して提出
- 相続人認定後、裁判所の許可により不動産名義変更
- 売却または管理
参考法令
California Probate Code § 6401 et seq.
California Probate Code § 21105
※ プロベートには数ヶ月~1年以上かかるケースもあり、弁護士費用、裁判費用も発生します。
日本法とカリフォルニア法の両方に通じた対応が不可欠
要点をまとめると、
- 相続人の確定 → 日本法(民法・法の適用に関する通則法第36条)による
- カリフォルニア不動産の手続き → カリフォルニア法による(プロベート必須)
日本とアメリカ(カリフォルニア)の両方の法律に精通した弁護士によるサポートが、国際相続をスムーズに進めるカギとなります。
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本記事は、具体的な法的アドバイスを目的とするものではありません。具体的な案件は、弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点(サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス)
カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和