カリフォルニア州の民事訴訟において重要な書類である「Points and Authorities（P&A）」について、実務的な観点から解説します。
1. Points and Authoritiesとは？
Points and Authorities（P&A）とは、ある申立て（motion）に関して、その主張を法的に裏付けるための書類であり、主張（Point）とその法的根拠（Authority）を体系的に示す文書です。日本の「準備書面」や「申立理由書」に近い役割を果たしますが、より厳密な構成が求められます。
2. 提出が求められる場面
カリフォルニア州では、次のような申立てにおいてP&Aの提出が必要です：
- Motion to Dismiss（訴訟却下申立て）
- Motion for Summary Judgment（略式判決申立て）
- Motion to Compel（強制開示申立て）
- Motion to Quash（送達無効申立て）
3. 書式と構成要素
California Rules of Court Rule 3.1113 に基づき、P&Aの典型的な構成は以下のとおりです：
- 序論（Introduction）
背景や主張の要約。 - 法的議論（Discussion）
各論点（Point）ごとに判例や条文（Authorities）を示しながら論理的に展開。 - 結論（Conclusion）
裁判所に求める救済を明示。
4. 実務上のポイント
- 各Pointは明確な見出しで構造化（例：I. Plaintiff Fails to State a Claim）。
- 判例・条文の引用は正確に。Bluebookに準拠。
- 事案に応じた内容調整が必須。他案件の流用は避ける。
- 事実の詳細な記載はDeclarationやEvidenceに任せ、P&Aは法的論点に集中。
5. 提出形式と期限
- 多くの場合、15ページ以内の制限あり（Rule 3.1113(d)）。
- e-filingにより、DeclarationやMotion本体と併せてPDF提出。
- 反対書面（Opposition）等の提出期限も重要）。
6. 日本の制度との比較
| 比較項目 | カリフォルニア（P&A） | 日本（準備書面） |
|---|---|---|
| 構造 | 法的主張＋根拠を明確に構造化 | 比較的自由な構成 |
| 引用 | 判例・条文の明示が必須 | 概略引用が多い |
| 独立性 | モーションに必須の独立書類 | 裁判官の判断により形式が柔軟 |
| ページ数制限 | 15ページなど明確な制限あり | 制限なし |
7. まとめ
Points and Authoritiesは、カリフォルニア州の民事訴訟において、申立ての法的根拠を裁判所に対して明示的に示すために不可欠な文書です。構造的かつ論理的であることが求められ、内容によって裁判所の判断に大きな影響を与える可能性があります。
【免責事項】
本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の事案に関する法的助言を構成するものではありません。具体的な案件については、カリフォルニア州の弁護士にご相談ください。
カリフォルニア拠点（サンフランシスコ、ベイエリア、ロサンゼルス）
カリフォルニア州弁護士・日本弁護士
田中良和