田中良和国際法律事務所

リーガル・セパレーション(Legal Separation)

カリフォルニア州で家族法の相談を受けていると、「離婚はしたくないけれど、このまま一緒に暮らし続けるのも難しい」とおっしゃる方に出会うことがあります。そういったときにお伝えしているのが、リーガル・セパレーション(法的別居)という選択肢です。日本の民法にはない制度なので馴染みが薄いかもしれませんが、状況によっては離婚よりも合理的な解決策になることがあります。今回はその仕組みと、実際にどんな場面で使われるかをご説明します。

一言でいえば、「婚姻関係を解消しないまま、財産分与・扶養・子の監護について裁判所の法的判断を得る手続き」です。手続きが完了しても、法律上はあくまで夫婦のままです。離婚のように婚姻関係が終わるわけではないため、再婚はできません。この点が離婚との最大の違いです。

実際にご相談いただく方の理由はさまざまですが、よく挙がるのは次のようなケースです。

まず、宗教的・個人的な信条から離婚に踏み切れないというケース。信仰上の理由で婚姻関係の解消を望まない方にとって、リーガル・セパレーションは現実的な妥協点になります。

次に多いのが、健康保険の維持を目的とするケースです。配偶者の雇用保険プランに加入し続けたい場合、離婚してしまうとその資格を失います。リーガル・セパレーションであれば婚姻関係が続くため、加入を維持できる可能性があります(保険プランの規定による)。

社会保障給付(ソーシャル・セキュリティ)の観点から選ばれることもあります。配偶者の給付に基づいて受給資格を得るには、婚姻期間が10年以上必要とされるケースがあります。離婚のタイミングを慎重に考える方にとって、この制度が一時的な解決策になることがあります。

また、将来的な和解の可能性を残しておきたいというケースもあります。完全に関係を終わらせることへのためらいがある場合、リーガル・セパレーションは「距離を置きながら関係を整理する」手段として機能します。

さらに、移民・ビザ関連の問題を抱えている方からもご相談を受けることがあります。配偶者のビザや永住権の申請・維持に婚姻関係が影響する場合、離婚のタイミングが非常に重要になります。

項目リーガル・セパレーション離婚
婚姻関係継続終了(独身)
再婚できないできる
財産・扶養などの法的決定ありあり

大まかな流れは以下のとおりです。

  1. 申立書の提出:居住しているカウンティの上級裁判所(Superior Court)に申立書を提出します。
  2. 配偶者への送達:法定の方法で相手方に通知(サーブ)する必要があります。
  3. 応答(レスポンス):相手方が正式に返答します。
  4. 仮命令・暫定合意:手続き中の扶養や親権について暫定的な取り決めを行います。
  5. 最終判決:裁判所の判断により法的別居が確定します。

離婚と異なる点として、カリフォルニア州内に6か月以上居住していることを申立ての要件としていません。州に引っ越してきたばかりの方でも手続きを開始できる場合があります。

カリフォルニア州はコミュニティ・プロパティ(共有財産)州です。婚姻期間中に築いた財産や負債は、原則として夫婦で50/50に分割されます。リーガル・セパレーションの手続きでは、以下の事項について裁判所が判断を下します。

  • 子の親権と面会交流
  • 養育費(チャイルドサポート)
  • 配偶者扶養料(スポウザル・サポート/アリモニー)
  • 財産と負債の分割

リーガル・セパレーションが確定した後に「やはり離婚したい」となった場合、自動的に離婚に切り替わることはありません。別途、離婚の申立てを新たに行う必要があります。この点は誤解されやすいので注意が必要です。

まとめ

リーガル・セパレーションは、宗教的な理由で離婚を望まない方、健康保険を維持したい方、将来の和解の可能性を残しておきたい方、あるいは移民・ビザの問題を抱えている方にとって、有効な法的手段となり得ます。ただし、状況によって最適な選択肢は異なります。「自分のケースにはどちらが合っているのか」をしっかり見極めるためにも、カリフォルニア州の家族法に詳しい弁護士に相談されることをお勧めします。


本記事は一般的な情報提供を目的としており、法的助言ではありません。具体的な法的問題については、必ず資格を有する弁護士にご相談ください。

カリフォルニア弁護士・日本弁護士
田中良和
(サンフランシスコ/ベイエリア/ロサンゼルス)

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